戦後グラフ雑誌と……

手元の雑誌を整理しながら考えるブログです。

14回 『週刊サンニュース』の末期症状(2)

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『週刊サンニュース』の末期、2巻9号(1949年2月5日)から、最終号の2巻12号(49年3月5日)までは、ニュース系の記事は、実は、ちょっと持ち直している。休刊が決まって、ストックしていた記事を消化しようということだったのかもしれないのだが、2巻9号(本文はグラビア印刷)では、薗部澄(「主婦よ 頑張れ!――物価引下運動――」)、木村伊兵衛(「歌舞伎――名優菊五郎を中心として――」、画像は17回参照)、稲村隆正(「モダン花嫁学校」)が、それぞれの持ち味を生かして撮影した記事が載っている。
一方、同じ2巻9号の、真ん中の見開きを使ったイラスト記事は、「われらの生活不安をのぞく社会保障は完全だろうか!」である。記事のタイトルは、右上がりに走る帯の中に、スローガン風に白抜きで入っている。斜めに配置することで、ページ全体に動感が出て、ドキドキ感を強める効果を上げている。ただし、今までの、イラストを使って分かりやすく解説した記事とはちょっと違い、文章を読んでも疑問は解決しない。その上、内容が暗く、告発調が強いので、一層、生活への不安感を煽られている気がして落ち着かない。
このように顔写真を大きく入れて感情に訴えるのは、すでに知っているスタイル――すなわち、戦時中のプロパガンダでしばしば使われていた、あのスタイルだ。同じような例があったはずだと思って、『FRONT』復刻版から探してみたら、14号(フィリピン号、1944年)に、雰囲気の似たページが見つかったので、画像を掲げておく。『FRONT』は、1942年に東方社から創刊され、写真には木村伊兵衛や薗部澄、デザインには原弘や多川精一、村田道紀ら(つまりは、のちの『週刊サンニュース』のスタッフ)が関わっていた大型(A3判)の対外宣伝誌である。
「われらの生活不安をのぞく社会保障は完全だろうか!」に見られるプロパガンダの手法は、『週刊サンニュース』のアイデアが枯渇してきた結果、経験済みの手馴れたパターンに頼ってしまった一例のように見える。

それにしても、今回、『週刊サンニュース』をひっくり返しながら実感したのは、やはり紙の悪さである。紙が悪いから、印刷も映えないし、気を使って紙をめくっていると、レイアウトや印刷を楽しむ気分が萎えてしまうのである。
『週刊サンニュース』休刊の翌年、写真家・渡辺義雄が浜谷浩との対談で、社会批判の色彩が強く用紙と印刷がよくない『週刊サンニュース』の印象を振り返っている。
「その頃硬い方では、廿二年の暮れに、名取(洋之助)氏がサン・ニュースを出した時は愈々グラフ時代が来るかと思いました。ライフ、ルック、タイムの間を狙つて、独創的なものを考えているようにみえて、氏の思考を写真化する、グラフ化するという計画の着手と思つたのですが、批判が多くて面白みに乏しいようにみえたのは損でした。それにグラフは写真がよくて印刷が美しくなくては商業価値が非常に割引されるから購買欲をそそらないのを感じますね」(「先輩に聞く」『アサヒカメラ』50年5月号)。

画像は上から、 3ページものの記事「主婦よ 頑張れ!――物価引下運動――」の2-3ページ(『週刊サンニュース』2巻9号、1949年2月5日、グラビア印刷、撮影:薗部澄)。◆А屮皀瀬鷁峅燃惺察廖福惱鬼サンニュース』2巻9号、グラビア印刷、撮影:稲村隆正)。:「われらの生活不安をのぞく社会保障は完全だろうか!」(『週刊サンニュース』2巻9号、グラビア印刷)。ぁ櫚ァАFRONT』14号(フィリピン号、44年、画像は平凡社の復刻版)。