戦後グラフ雑誌と……

手元の雑誌を整理しながら考えるブログです。

30回 『LIFE』は、日本で言うところのグラフ誌だったのか?

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ホープ』(実業之日本社、1946年1月創刊)の『LIFE』風外観は、1年で終った。それからほぼ1年後に、「日本の『LIFE』をつくる」と意気込む『週刊サンニュース』(サン・ニュース・フォトス、8号からサン出版社、47年11月創刊)が登場したが、1年半しか続かなかった。日本では、『LIFE』風表紙も、『LIFE』の報道写真の手法も、読者には受け入れられなかった、という結論になる。しかし、『LIFE』とは、どんな雑誌だったのか。

実際に『LIFE』を手にしてみると、ページ数があり(おおよそ64ページから144ページ)、文字量が多く、日本のグラフ誌とは違うジャンルの雑誌ではないのか、という感想を持つ。
36年11月の創刊から40年代の『LIFE』のレイアウトについて、以下のようなことが言えると思う。
初期の『LIFE』には、円形を多用したり、写真を斜めに配置するなどの装飾的レイアウトが見られる。その後、水平・垂直が基本のレイアウトに改良され、近代デザインらしくスッキリとなる。定価の安い大衆雑誌は、記事の間にさまざまな広告を載せる必要があるが、広告の本数はすぐには確定しないものだ。そこで、本文の組み方と広告スペースの法則性を工夫することになる。
当初の広告スペースは、2ページ、1ページ、縦1/2ページ、横1/2ページなど、大きな割り方中心だった。のちに、横型の広告は原則廃止し、細長い縦1/4ページ広告を多用して、本文を広告が挟むレイアウトを始める。そのときの本文は、もちろん縦1/2ページの幅。広告量の増減に対応でき、なおかつデザイン感とリズムを生み出す、という賢い版面設計だ。
個々の記事に即して言うと、トップページ(大特集には、見開きを使う)に広告は入れずに写真を大きく扱い、本文は3段組みを基本とする。そして2ページ以降は、どんな広告にも対応できるように、1/2ページ幅に組むのである。
『LIFE』の表紙写真はモノクロだが、裏表紙や本文にカラー印刷を多用している。カラー印刷に対応するためにも、白くて平滑性のある用紙は必須である。表紙用紙の厚みは0.13ミリ。本文は0.07ミリから0.09ミリで、文字、モノクロ、カラーなど、内容に応じて数種類の用紙を使い分けている。印刷方式は活版印刷。高速輪転印刷機が使用されたはずだが、精度が非常に高い。また、カラー印刷は、記事よりも広告に多く割り振られ、読者の目を広告に吸い寄せる効果を上げている。大量の広告によって、雑誌全体の印象は、記事の内容以上に多彩で柔軟である。

繰り返しになるが、『LIFE』をめくっていても、日本のグラフ誌――『アサヒグラフ』『毎日グラフ』『読売グラフ』など――を連想することはない。
『LIFE』を見ると、個人的には、60年代の『文芸春秋』を思い出す。『週刊朝日』『文芸春秋』『暮しの手帖』の3誌が「国民雑誌」と言うべき存在だった時代で、『文芸春秋』(と『家の光』)は月刊誌のトップランナーだとされていた。
A5判の『文芸春秋』の、どこが『LIFE』につながるかというと、活版組みの本文の間に、カラーグラビアの広告(航空会社や車、カメラ、高級装身具など)が飛び飛びに配されていたからだ。広告の印刷は鮮明で華やかで、文字ばかりの後半部分のアクセントになっていた。これらの広告ページを切り抜き、台紙に貼って楽しんだ経験もある。そのころの『文芸春秋』の本文と広告の対比の感覚が、『LIFE』によく似ていると感じるのだ。ちなみに、『文芸春秋』の表紙用紙の厚みは0.19ミリ、ザラ紙の本文用紙は0.13ミリ、グラビア用紙は0.08ミリといったところ。画像を紹介した69年7月号は、特価160円で本文394ページ。面積で計算すれば、『LIFE』の約130ページ分に相当する。弁当箱のように分厚い『文芸春秋』でも、『LIFE』の厚めの1冊と同じなのだ。
40年代アメリカの週刊『LIFE』は、60年代日本の月刊『文芸春秋』に相当する、というのは、ちと乱暴ではあるが、そう言いたいくらいに、『LIFE』の文字量は多く、広告はカラフルなのである。

画像は上から、 Ы藉釗LIFE』の、円形を多用するレイアウトの例。右ページに縦1/2ページ広告が見える(1937年1月11日号、活版印刷)、◆Ъ命燭鯊腓く配し、本文は3段組み(ここでは、右1段分は図版スペースになっている)というルーズベルト特集のトップページ(『LIFE』1947年11月3日号、活版印刷)、:△竜事の続きの一部分。広告が見開きの3/4を占める(『LIFE』1947年11月3日号、活版印刷)、ぁА慂厳歃媾』の本文にカラーグラビア広告が挟まる例。本文にも縦に広告が入っている(69年7月号、カラー広告はグラビア印刷、本文は活版印刷)。