戦後グラフ雑誌と……

手元の雑誌を整理しながら考えるブログです。

10回 『週刊サンニュース』のレイアウト(3)

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初期(創刊号から7号)の『週刊サンニュース』の左開き横組みは、レイアウトする立場からは、たいそう合理的だ。雑誌全体、一つの記事、一つの見開き、本文の組み方、写真のレイアウト、キャプションの組み方、というすべての観点から見て、左上から右下方向へと視線が移動するからである。
そう考えて、横組み時代の『週刊サンニュース』のレイアウトを振り返ると、あまり熟練されていない感じがする。しかし、水平方向を強調し、それなりに法則を守って格子状に処理することで、カッチリしたレイアウトを目指していたと言えるだろう。
ところが、8号(1948年1月29日)以降、右開き縦組み(視線は、右上から左下へと移動する)になってからは、緊張感がゆるんでしまう。たとえば、同じページの中に縦組みのキャプションと横組みのキャプションを混在させたりするので、法則性がぼやけてしまった。
その原因は、『週刊サンニュース』の記事の組み立てにあったのではないか。
グラフ誌では、ほとんどの記事が見開き単位で進行する。右開き縦組みでは、見開きの中の流れ方向と、横組みのキャプションの方向が逆である。それを、いかにストレスなしに読んでもらえるようにするかがカギだ。見開きの中で完結すればよいのだから、あたかも横組みの雑誌であるかのように見せることもできる。
ところが、『週刊サンニュース』では、3ページものの記事を連続させることがあり、見開きの右ページと左ページが別の記事になる。これでは、見開き進行という考えかた自体が成立しない。ページ数の少ないグラフ誌では、一つの記事が奇数ページにならないようにするのが肝腎で、思い切りよく2ページか4ページの記事になるように決断すべきだったと思う。

じつは『週刊サンニュース』は、表紙に「皆さんの綜合雑誌」「皆さんの家庭綜合雑誌」などと謳い、従来のグラフ誌とは違うと自己主張している。
8号の「読者におくる編集者の言葉」で、「これまでわが国で普通に考えられているようなグラフ雑誌や画報ではない」と言い切り、「グラフ形式の綜合雑誌」「新しい種類の雑誌」だと規定している。「綜合雑誌という一つの型」があるが、「あまりに難しすぎて 一般の読者には 理解しにくい」。「そこでこの雑誌では 写真や絵や図解などの あらゆる視覚的な形象をも作つて 文字を読むと共に 眼にうつたえることによつて 出来る限り やさしく 理解し易いものにし どんなむづかしい内容のものでも 肩が凝らずに 楽しんで読めるようにしたい」というのだ。
たしかに、創刊号から「極北綺譚」という読み物を連載していたくらいだから、なるべく文字を読ませたいという姿勢は感じられる。「読者におくる編集者の言葉」が掲載された8号からは、井伏鱒二の長篇小説「貸間アリ」の連載が始まる。1回目は6ページを使い、大きくイラストを扱い、堂々たるスタートである。しかし、たった24ページの雑誌で、この扱いはちょっとスペースを取りすぎではないだろうか?

画像はすべて『週刊サンニュース』。上3枚は16号(1948年6月5日、オフセット印刷)に見られる、3ページものの記事の連続の例。16号より「踊子――永井荷風浅草を行く――」の1-2ページ(撮影:稲村隆正)。同じく16号より「踊子――永井荷風浅草を行く――」の3ページ目(右ページ、ノドに区切りの太い縦罫を入れて連続性を断ち切っている)と「怪々の街新宿を衝く」の1ページ目(左ページ、縦組みキャプションあり、撮影:藤本四八)の見開き。同じく16号より「怪々の街新宿を衝く」の2-3ページ目だが、左右ページの連続性を感じさせないレイアウト(撮影:藤本四八)。8号(48年1月29日)より井伏鱒二「貸間アリ」の連載1回目。あまりに堂々としすぎるレイアウト(オフセット印刷、絵:高森捷三)。